コラム

ミラーニューロンとエスノグラフィー

脳科学の大発見と騒がれたミラーニューロンの話題も最近はすっかり少なくなりました。
マカク族のサルでしか特定されてないことと、そのサルも食事行動でしか発火しないことが大きな原因らしいです。
ミラーニューロンそのものの特定はされなくても「ミラーニューロン的な脳の動き」という研究はあるようです。
相手の行動をそのまま真似る「サル真似」は、アホか未熟な子供の行為として非難されますが、大人の世界でも「習うより慣れろ」とか「OJT」とかの高尚?な表現で「サル真似」を奨励しています。
学習だけではなく、言語の獲得、社会性(他人の意図を理解する)、心の理論、など、さらには自閉症との関連でミラーニューロン(ミラーニューロン的脳の振る舞い)は便利に使われているきらいがあります。
理論的な深さは問題にせず、とりあえず使って見る、というフットワークの軽さがマーケティングのよいところ?ですからミラーニューロンも使わない手はありません。

ここで、ミラーニューロン的脳の動きを「観察者が対象の行動(行為)を観察している(見ている)時に、観察対象と同じ脳の部位(運動野)のニューロンが発火する」ことと(勝手に)定義してみます。
行動観察調査において、自分(観察者)のミラーニューロンを発火させる準備をしておくことが大切なのでは、ということです。
具体的には観察しながら、

  • 対象の動きをマネて見ること
  • 対象者のつぎの行動を予測して動いてみること

の2点に留意することです。
行動観察を机上の科学と思い込み、分析のことばかり考えて対象を観察していると失敗します。
行動観察したがなにも発見できなかった、或いは当たり前のことしかわからなかった。という場合は、次の機会に自分ミラーニューロンを発火させることを意識するといいかも知れません。
参与観察(=エスノグラフィー)の要点のひとつとして、観察者(リサーチャー)の「ミラーニューロンの発火準備」という(妙な)提案をしておきます。

2010,7

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