アウラの商品群
エスノグラフィックインタビュー
アウラマーケティングラボの新商品です。
エスノグラフィーは他文化(異文化とはあえて言わない)の理解に威力を発揮しました。
南米の未開部族から日本の暴走族に至るまで、自分達とは異なる文化を持つ集団を理解しようとした時非常に有効な方法論でした。
マーケティングリサーチが相手にする社会集団は、「文化」が違うというほど我々と異なってはいませんがターゲットの消費者を「異なる文化」を持つ集団と考えてみるのはよいことかも知れません。
「消費者を理解する」というリサーチの目的から考えても簡単には理解できない集団とした方がより深い理解が得られるかもしれません。
マーケティングリサーチに応用するという視点でエスノグラフィーを検討しました。(第11回アウラセミナー)エスノグラフィーのエッセンスは「参与観察」という方法論と収集したデータの「社会文化的解釈の記述」という分析の視点でした。
参与観察は、長期間対象の社会集団と生活を共にすることが前提ですからマーケティングリサーチでは考えられない方法論です。調査対象世帯を訪問するだけでもリクルーティングが大変なのに数ヶ月にわたって一緒に生活するなんて考えられません。
社会文化的解釈もマーケティングレポートでは、「分析者の勝手な解釈だ」「冗長だ」とダメだしを食らう場合がほとんどです。さらに「あなたのレポートは記述的過ぎる」も日常的に非難の言葉です。
以上のようにエスノグラフィーをそのままマーケティングリサーチに適応するのは困難と判断できました。
使える部分は「参与観察」の中にある対象の社会集団に「入り込んで」「行動を観察する」の2点です。
冷たく分析することを忘れずに、対象の中に共感的に入り込む、というのが我々のモデレーターの心得です。ただ、通常のインタビューはインタビュー会場で行うため対象者の日常生活の場から離れています。
行動の観察はできないし、対象者も行動を「思い出しながら」会話するので記憶違いや適当な合理化を防ぐことはできません。
それをモデレーターが対象者の行動の場を「共有」することで、
- モデレーターは対象者がコトバで合理化する前の行動そのものを観察できる
- 自分の実行動を意識化(コトバ)することで対象者にも新しい気づきがある
という相乗効果が生まれる可能性が出てきます。
アウラマーケティングラボでは、従来のマーケティングインタビューに、この場の共有と行動観察を組合わせることで新しいインタビューメニュー「エスノグラフィックインタビュー」を提案します。
是非、トライしてみて下さい。
エスノグラフィーのマーケティングへの応用
文化人類学、社会学で 「他文化」理解に 有効な方法 「エスノグラフィー」 |
マーケティングリサーチの目的である 消費者理解に有効な方法なのでは? |
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方法論の中心は参与観察 | ||
参与観察とは、
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実査期間と個人情報の問題で実施困難 | ||
参与観察のエッセンス:「入り込む」、「観察」をいただく |
エスノグラフィックインタビュー
エスノグラフィックインタビューの実際(実験) | ||
<テーマ>
<方法>
お弁当のブランド選択行動
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エスノグラフィックインタビューの成果 | ||
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エスノグラフィックインタビューのメニュー
ホームビジットインタビュー
<方法> | 対象者の自宅に訪問してインタビュー(1 on 1)する従来からあるインタビュー手法 |
<エスノグラフィー> | ソファに座ったお客様でなく家の中を動き回って(許される範囲)インタビューと観察 |
買い物のエスノグラフィー
<方法> | 実際の買い物に同行し、ヴィデオ撮影。再生しながらインタビュー。1 on 1かミニグループ。 |
<エスノグラフィー> | ブランド識別、選択プロセス、「何故、買い物かごに入れなかったか」にフォーカスしてインタビュー 実際の店舗が最適だが、難しい時はインタビュールームに棚を設置 |
Web消費のエスノグラフィー
<方法> | インターネットでの買い物をヴィデオ撮影。再生しながらインタビュー。1 on 1かミニグループ。 |
<エスノグラフィー> | 画面のアイトラッキング的要素に注意して、画面の中で視線が行かなかった要素にフォーカスしてインタビュー ホームビジットがよいが、インタビュールームでの操作でほぼ問題ない |
製品使用(消費)のエスノグラフィー
<方法> | 使用している場面でインタビューと観察 |
<エスノグラフィー> | 一定期間行動を共にする。→マーケティングリサーチとしては困難が多い(調査依頼、プライバシー) |
* エスノグラフィックインタビューはテーマごとに見積(金額、期間)が必要です。
→ 詳しくは 090-2626-2844 へ
行動観察→aha!体験→エスノグラフィー
だいぶ昔の行動観察のまとめです。
1970年代の銀行の「窓口係(リテーラー)の生産効率アップのための行動マニュアルの変更」がテーマ。
当時の状況(現場)
- ATMは設置されておらず、個人客は全て1階の窓口で対応
- 各支店5~10程度の窓口(リテーラー)。 ← 法人顧客は基本的に別窓口(2階)で対応
- 通帳、印鑑、現金がリテーラーが仕事で扱うもの
- 生産効率の指標は(定期)預金獲得額(リテーラーごとに集計)
- 行動マニュアルは、定期預金の勧誘、正確な計算=ミス撲滅、明るい対応、他の内容だった
アプローチ
- 定量分析(預金獲得額を説明できる要素を多くのデータと分析手法を使って抽出)
- 定性分析(来店客、潜在顧客、リテーラー、行員、支店長、などのインタビュー)
- 観察調査(代表的な数店ににVTRを設置してリテーラーにフォーカスして撮影)
結果
- 定量分析結果の説明力が弱い。特に行動マニュアルに活かせるような結果が出ない。むしろ矛盾する。
- 定性分析結果も一般的結果。預金獲得には「笑顔で対応、詳しい説明(金利など)、正確な作業」
- 観察調査結果は混乱。成績(預金獲得)と①②の結果が矛盾。
成績トップのリテーラーは「笑顔(美人)じゃない、説明時間が短い、ミスもする、態度に落ち着きがない」という結果
ここで本格的な行動観察調査ということで以下の作業を行った。
- 成績トップのリテーラーの支店を1週間、観察するとともにVTR撮影 → 対象の絞込み
- トップと最下位のリテーラーの行動を書き出す → 行動の分節化(行動観察表の作成)
- 分節化した行動の意味を想定して書き加える → 仮説の設定と分析
この作業が困難を極めた。
- 8時半~3時までの390分のVTRを5日分(1950分=30時間以上)を2回も3回も複数の分析者が見る
- 分節化した行動の意味の解釈を分析者数人で討議する
- 成績と行動の関係を分析する
とこれだけでヘトヘト。
さらに分析結果に基づいてリテーラーにインタビューもした。
ここまでで、「見える化」「ユリイカ!」「a-ha!」といえる数多くの知見が得られたが、これぞエスノグラフィーといえる 発見が次のもの。
- リテーラー5人の前に出来る列の長さが違う ← 待ち時間を考えれば列の長さは平準化するはず
- 成績トップのリテーラーの列はいつも他より長い
- 接客数が多ければ、預金獲得のチャンスが多いので成績が良いのは当たり前
- だったらこの子は列を長くする「術=行動」を持っているはず
<もう1回VTRを見て、行動観察表を見直してもわからない。暗礁に乗り上げ> - その時、ある1人が叫びました。「よそ見だよ!この子はよそ見が多いんだよ!」 ← ユリイカ!
- 他の分析者は「?」でしたが、その人の説明を聞いて「a-ha!」となりました。
ストーリーはこうなります。
- この子はお札を数え終わった時などに目線を目の前の対応客以外に向ける ← マニュアルでは×
- ドアから入った客と目が合うとその客はその子の窓口の列に吸い寄せられる
- 待ち時間が長く、隣の窓口行こうとしても、時々その子と目が合うので移動しずらい
- 他の窓口の子は列が少ないのにこっちを向いてくれないので一層、移動しずらい
- だから、成績トップの子の列が長くなる
この内容は、後で顧客数人にインタビューしても顧客は気づいて(意識して)いなかった。
その子(リテーラー)は、インタビューで「店内のお客様全員が私のお客さま」という結論(ユリイカ)を出したが、自覚的
ではなく、インタビュアーと協同で導き出した認識であった。
ユリイカを叫んだ分析者の自己分析
(・後で、自分の行動観察表をみたが「また、よそ見。落ち着きがない」という観察結果しかない)
- リテーラーの視点(立場に立って)でVTRを見直した
- よそ見したとき、よそ見とするのは分析者の視点。よそ見ではなく、彼女は何を見ていたかの視点への転換
視点の転換、対象者の中に「棲みこむ」視点が大切ということになった。 ← これも後知恵
これこそがエスノグラフィのいう「参与観察」でしょう。
長い期間、対象と一緒に生活していても「観察者の視点」だけでは参与観察にならない。
以上はマイケル・ポランニーの「暗黙知」の概念に近いと考えてます。