コラム

ランキングにしたがう消費者

6月4日、NHKの「クローズアップ現代」で出版不況を取り上げていました。
最後まで観ていなかったので前半だけの印象ですが、何か「物足りなさ、違和感」がありました。
記憶に頼って出版不況に関するNHKの分析を追ってみると

  • Webなどで発表される出版数ランキングだけを頼りに本を購入する消費者を取り上げる。
  • 出版点数の大幅な伸びと書店数の漸減のクロスした2本の折れ線グラフを提示する。
  • 優良?大手出版社、草思社の倒産を取り上げる。
  • 優秀な書店員をそろえた老舗書店が閉店し、ABC分析による棚割り導入書店に生まれ変わったことをとりあげる。

という展開になっていました。(解説部分を除いた「画像=取材」部分だけです。)
このストーリー展開をそのまま解釈すると、ランキングだけを頼りに本を買う読者が増えたことで「心ある」出版社と質の高い街の書店が消えてしまっているのが現在の出版不況の実態ということになりそうです。
間違いと断定できないものの、何か気持ち悪さが残るストーリーです。
しかも、「風が吹けば桶屋が儲かる」的ユーモアもありません。
読者分析の踏み込み不足が原因のひとつと言えそうです。
出版市場は、読者、出版社(著者・印刷会社)、書店(取次)の3者で構成されているのは間違いありません。
重要な読者の分析を「ランキングだけで本を買う(ブランド選択)読者が増えた」という乱暴なものだけで終わらせています。
それもデータの裏付けが弱く、ランキング情報が増え、ランキング上位の本が売れているという事実と「ランキングを参考に本を買う」という主婦のインタビューだけです。
これでは、バカな読者が増えたことで、良書が追放され悪書がはびこるという論法になります。
さすがにNHKという立場上、読者=視聴者=受信料支払い者のことをバカ呼ばわりはしていませんが、ずさんな分析であることにはかわりがありません。
Webの浸透で本に限らず売り上げランキングデータが簡単に手に入ります。
ブランド選択の時にランキングを参考にする消費者は増えていると考えられますが、「ランキングだけ」という人が増えているとは考えられません。
マーケティングリサーチ的には今回のNHKの読者分析は「ペルソナ法」といえますが、間違ったペルソナ法の典型といえます。

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