コラム
買物の節約と浪費と過剰
グループインタビューの出席者の主婦の口からは、まだ、100年に一度というコトバは発せられていません。
世の中の不況が家計にほんとうに影響するのはマスコミが騒いで1年以上たってからのようです。
前回のバブル崩壊の時もそうだっと記憶しています。
今の主婦は、景気は良くないという認知はあるものの、「不況のせいで我が家は節約しています。」ということがグループ全体の雰囲気として成立するまでにはなっていないようです。
何回かの好況・不況をグループインタビューという場で観察してきたことから次のことが言えそうです。
- 消費者は「節約したって不況は終わらない」と深く認識している
- 浪費こそ消費行動の本質であって、節約していても浪費は発生する
- 消費者行動は「過剰」をキー概念にして分析しないと理解できない
消費者は「節約」がヘタでしかも長続きしません。家計費全体を最適配分し、最安値で最低基準を満たした調達(買物)を行うというトヨタの購買部門のような行動はとりません。こまめに消灯する一方で「私は暑がりだからクーラーはつけっぱなし」、Webチラシまで参考にして安い店を探したのに「車の運転が好きだから車で結構遠くまで買い物にに行く。」と平気で発言してしまうといった具合です。
浪費の典型は衝動買いですが、不況時はこの欲求がマグマのようにたまっています。そして、好況になる前に圧力に耐えられず爆発します。マスコミは「クローゼットや部屋の中は商品であふれ、消費者が欲しいと思うようなものがなくなった。」という言説を並べますが、溢れていればそれを処分して、あるいはクローゼットを買い足しても「買い物という快楽」を追求するのが消費者です。
ここから、消費行動は全て「過剰」をキーにしないと解明できない部分が出てくると考えます。
消費行動は過剰な選択肢、過剰な機能、過剰な装飾、過剰な情報の中で行われ、それを楽しんでいるのが消費者です。一見、無駄にみ見えるこの「過剰」こそが消費の本質かもしれません。
ですから、消費にはお金だけでなくエネルギーが必要です。お金はあってもエネルギーが少ない年配者の消費は節約を意識しなくても自然にそうなるようです。
2009,7