コラム
「アクティブインタビュー」
アメリカの社会学者2人の共著です。(ジェイムズ・ホルスタイン ジェイバー・ブグリアム)
翻訳が悪いのか、原文がわかりづらいのかいずれにしろ、読みづらい本でした。
社会学者ですから、彼らのいうインタビューとは、精神医療や高齢者ケアのための1on1インタビュー、あるいはペアインタビュー、ファミリーを単位にしたインタビューになります。
その経験をもとにして「アクティブインタビュー」という方法論を提案しているわけです。
2人が提唱する「アクティブインタビュー」とは、
「モデレーターは対象者にアクティブに働きかけて、共同作業として意味の構築を行うべきである。」
ということです。
マーケティングインタビューでは、「モデレーターは対象者が自然な発言ができるように援助するだけで、バイアスになる危険がある働きかけは極力避けることが重要。」といわれています。
標準的な教科書にあるモデレーターの心得は、
- 質問は書いてある通りに読む。 ← 事前に質問文を構成しておく
- 対象者の発言が不完全だったら、必ずプロービングする。
- モデレーターは、中立的であり、特定の価値や嗜好を対象者に感じさせない。
- 発言に正・負いずれのフィードバックも行ってはいけない。
というものです。
この考えの背景には、
対象者は、それぞれ固有の「回答のリソース(事実と経験の内容)」を持っていて、インタビューの場面では、そのリソースから「回答の容器」を用意してくれているから、モデレーターは「中立の立場と質問」で「回答を引き出す」だけでよい。
という前提があります。
つまり、「対象者はまえもって形成された純粋な情報という商品をもって」いるから、それを「インタビューのプロセスによって何らかのかたちで歪曲」することは、バイアスになるとする前提です。
ところが、対象者は、あらかじめ「純粋な情報という商品」を「回答の容器」に入れてインタビューに参加するのでしょうか。
そんなことはありえないと考えるのがこの2人です。
インタビューの対象者は、対象者本人が発話する内容と他の人(モデレーターを含む)の発話の内容を聞くプロセスが常に「回答のリソース(事実と経験の内容)」にフィードバックされ、リソースそのものを変化させるというダイナミックな動きをするというように考えます。
ですから、アクティブインタビューのモデレーターは、
- モデレーションを通して、対象者と「意味生成の協働作業」を行おうのであり
- それは、対象者の回答リソースの再認識、脱構築、創造を行うことでもあり
- そこからは、単なる回答ではなく「実践的推論」を導き出す
という作業を行うのが使命であるとなります。
マーケティングインタビューにそのまま適用できるとは思いませんが、感情をまじえず、中立的な態度に終始するインタビューマシンのようなモデレーションから、マーケティング上の有効な知見が得られるのでしょうか?
マーケティングである以上、インタビューの分析結果は実践的である必要があります。
つまり、バイアスの大小は、インタビュー結果の実践(マーケティング施策の実施)でこそ計られるべきで、インタビュー中のいわゆるバイアスは大事の前の小事ではないでしょうか。
すでに言いましたように、これは社会学者が学問的に書いたものですが、マーケティングの教科書よりも実践的でおもしろい本になっています。
2005,1