コラム

「世界が認めた和食の知恵」

サブタイトルが「マクロビオティック物語」と成っています。
マクロビオティックとは、穀物と野菜を主体にした伝統的な和食が、健康と長生きには最適であるという聞き慣れた主張の中で、桜沢如一という人が主唱し、米国始め世界各国に広めようとした「思想」「民間療法」「新興宗教」のようなもののようです。
本の内容は、伝記(伝奇)とも成功譚ともいえるものですが、肝心のマクロビオティックの詳しい内容やそれが「和食の知恵」といえる理由は、「あるある大辞典」以上にはよくわかりません。
唯一具体的な記述は、ある日本人が肺ガンの宣告を受けた際、手術ではなくこのマクロビオティックによってガン治療を行おうとした時のメニュー(玄米、野菜、海藻、みそ汁、たくあん、梅干し)だけといえます。

肉食、乳製品タタキはこういったたぐいの考えの常套ですが、実際のところはどうなのでしょうか。
肉食は、野生の肉食獣のように食物連鎖の頂点に立つモノのための完全食であるという説もあります。
サッカーの中田英寿も肉食だったようです。(今は知りませんが、昔、そんな記事を読みました)穀類と海藻(草ではないそうです)野菜だけの食事が肉食より健康のためによいのに何故、肉を食べるのか?
そこを考えると食欲が、満腹感や栄養素だけでなく味覚の欲求からも成り立っていることがわかります。
そういった欲望を抑制せざるを得ない「病人」か「老人」にならないとこういった食事療法(「食養」「正食」という言い方もあるそうです)がなかなか受容されない理由のひとつと考えられます。
肉食産業はBSE問題だけでなく、食料生産エネルギーの無駄使いで地球環境問題的にも不利な立場にありますが、地球上が病人と老人だけにならない限り、隆盛を極めていくことでしょう。
そして、この本でも指摘しているように、マクロビオティックのような考え・思想は「フードファディズム(food faddism)」として白眼視され続けると思います。

この本は新潮新書ですが、新潮新書は「バカの壁」以来、タイトル付けに腐心し過ぎるようです。
この前に読んだ「人は見た目が9割」もタイトルが秀逸なのに中味がもうちょっとという印象でした。

2005,11

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