コラム

「非言語コミュニケーション」

 マジョリー・F・ヴァーガスというアメリカの大学の先生が書いた本で、1987年に新潮社から石丸正さんによって訳出された古い本です。
そのせいもあって、非言語コミュニケーションに関する知見で新しいものはありません。
逆に、その後の研究の発展によって、「間違い」と思われるような記述もなく、よくまとまった内容にになっていると思われます。
著者は、非言語コミュニケーションを人体、動作、目(アイコンタクト)、周辺言語、沈黙、身体接触、対人的空間、時間、色彩の九つに分けています。
非言語コミュニケーションも使って情報(データ)収集、分析、解釈ができるのが、定量調査に対する定性調査(グループインタビュー)の優位性ですが、ここにあげた九つの非言語コミュニケーションのうち「目のコミュニケーション」がモデレーションでは重要です。
   著者は学校の先生の非言語コミュニケーションのテクニックとして、 「熟達した先生は、生徒全員を定期的にゆっくり見渡すのだ。
その中から反応を示している 顔を見逃すことなく、時には話をちょっと区切って、個々の生徒との相互注視に当てる。
このようにすれば、教室での生徒の関心度も理解度もかなり高まるのである。」(省略して引用してます)ということを言っています。
学校の先生(と言っても小中学校までぐらいですが)とモデレーターは似た役割を負わされていると考えられます。
個人の自主性を引き出しながら、集団意識を醸成しないといけないという点が似ています。
個々の生徒を機械的に平等に扱っていては、クラス全体の授業への「関心度、理解度」は高まらないし、個々の生徒の自主性だけに任せていたら「学級崩壊」です。
先生の意志や意欲が感じられないなら、本を読むだけ、Googleの検索だけで授業ができてしまいます。
生徒の関心度、理解度を高め、自主的な学習意欲を引き出すために教室という「場」が設定され、言語だけではなく非言語コミュニケーションを動員した授業が行われる訳です。
一方、各サンプルを平等に扱って言語だけで調査(コミュニケーション)する定量調査では、抜け落ちてしまう情報を「インタビュールーム」という場に集まって、非言語コミュニケーションを動員して拾い上げようとするのがマーケティングインタビューです。
   教室で先生が使う、あるいはインタビューでモデレーターが使う非言語コミュニケーションとして目(アイコンタクト)が有効であると言っています。
というより、他の非言語コミュニケーションは使えないといえます。
例えば、いくら効果的と言っても身体接触は体罰になりやすいし、インタビューでも使えません。 先生は、目と沈黙(時には話をちょっと区切って)をうまく使っているようです。
モデレーターも、

  • 常に出席者全員に視線を向ける。(特に始まったばかりの時は全員平等に)
  • 発言者に視線を向ける。
  • テーマに即した発言には「強く、深く」うなずく。
  • ひとりが延々と話し始めそうだったら視線をそらす。
  • 発言が少ない人と思われる人に意識的に視線をおくる。
  • 次々に質問を浴びせないで、適当な「間」をおく。

ということを心がけるべきでしょう。

2007,2

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