コラム
新消費者行動モデルDAMAの遷移
1.新製品の消費者行動モデルAIDMAとAISAS
消費者行動モデルはAIDMAやAISASが有名だが、マーケティングの現場で使われることは少ない。
富澤豊さんによるとそもそもAIDMAはいつ誰がいい出したかはっきりわからないらしい。
(富澤豊『AIDAモデルは100年前になぜうまれたのか?』)
AIDAモデルにMのステップを追加してAIDMAにしたのはたぶん、テレビ広告が普及したあとの日本の市場に対応させたものと想定できる。ということはAIDMAをいい出したのは日本の大手広告会社ということで間違いない。
なぜ、M(Memory)を入れたかと言うとテレビ広告の効果を強調したかったのであろう。
テレビ広告をみて製品に気づき(Attention)興味関心を持ち(Interest)、欲しいという気持ち(Desire)
が起こり、それが記憶(Memory)されて、買われる(Action)という遷移をモデル化したと言える。
テレビ広告は大量投下が前提であり、一定以上のGRPを獲得しないと効果がない、とされている。
このヘッブの法則的な広告接触が製品名と欲求の記憶を作るという前提なのである。
当然、AIDMAモデルは既存品よりも新製品の消費者行動モデルにフィットする。
マーケティング4Pのプロモーション環境がテレビからネットに移ったと言われ始めた頃からAIDMAでなく、AISASが提唱
された。
これは興味・関心(Interest)を持ったらネットで検索(Search)する、購入後、情報発信する(Share)
するというモデルだが、Searchはともかくshare行動はほとんど発生していない。
販促施策としてのインフルエンサー戦術はあるが、消費者の自然発生的Shareはほとんど発生していない。
以上から、AIDMA、AISASモデルは既存品よりも新製品の消費者行動モデルにフィットする。
2.既存品の消費者行動モデルDAMA(ダーマ)
大量の広告宣伝によってAttentionを取り、興味関心を持たせ、欲求まで刺激して、それを記憶させ、最終的に買物
カゴに入れ(あるいは画面をポチ)させて購入に至らせるのがAIDMAモデルである。
これは新製品、新ブランドには当てはまるが既存品のモデルとしては欠陥が大きい。
既存品はすでに認知しているし、購入経験もある消費者が数10%はいるはずである。(認知、購入経験の少ない製品は市場から消えてしまう。
既存品だけの市場を考えて、消費者の購買行動をモデル化したのがDAMAである。
DAMAモデルはD(Desire)が基点になる。この欲求は生理的・社会的欲求であり、マーケティング要素は少ない。
「喉が渇いたから何かの飲みたい」「来週、知人・家族の誕生日だからプレゼントを選ばなくては」などDAMAモデルを
外部から起動する。
これはマーケティングのコントロール外である。
3.DAMAモデルの遷移
D(Desire)が発生するとM(Memory)記憶が参照される。
記憶とともに店頭やネット画面で探索が行われ、
気づき(Attention)があり、その気づきと記憶が照合される。
「これはパンチがあっておいしかった」記憶とAttentionがプラス方向で合致すれば、あとは価格チェックなどが行われ、問題なければ購入(Action)される。
Actionした結果の満足度が高ければM(Memory)にフィードバックされ、記憶によい印象がブランド名とともに定着する。
この定着が強化されれば、「習慣的ブランド選択」で優位なポジションを得られる。
こういった体験(ACTION)はヘッブの法則に従い、何回も体験することで強化される。
この記憶(Memory)は回数を増やすだけでなく、ストーリーとして記憶させる方策を考えるのがマーケティングである。
ここで始めて広告・販促の役割がでてくる。「買って飲んだ」という体験をストーリを持って記憶してもらえれば強力な
ブランドロイヤリティーになる。
カテゴリーエントリーポイント(CEP)でも優位な位置取りとなる。
2025.6