コラム
『本』「なぜ通販で買うのですか」 斎藤駿
「通販生活」の成功物語。
通販生活とルームランナーの仕掛け人が同一人物であったとは驚きでした。
そして、ルームランナーが日本の通販のブレークスルーになっていたということも驚きでした。
この2つに共通した成功の要因は、『商品の使用価値を消費者に納得がいくように説明できたから』ということらしいです。ポストモダン以降、マーケティングの世界でも商品の使用価値よりも「差違的価値(デザインやブランドなど)」が強調されすぎる傾向がありました。それへの反省や反発があったわけではないのですが、結果としてあくまでも商品の使用価値を消費者の納得がいくように説明できたことが成功の要因であり、店頭販売、マス広告では、消費者の納得的理解が得られにくい商品ジャンルや商品は存在するということです。
この本からの教訓は、「納得的理解」という概念でしょう。
心理学でいう「了解」に近いものではないでしょうか。
この納得的理解の得られない商品は、売れないか売れたしてとも長く続かないことになります。
新製品のコンセプトチェックのリサーチを考えた時、例えば、「健康によい酒」というコンセプトの評価を取ったとしましょう。健康志向の高まりという時代のトレンド、酒=酔いという現実逃避が必要なストレス社会、麻薬が反社会的とされている全体的的合意、製造方法、販売ルートも確立されているというマーケティング条件、どれをとってもこのコンセプトを否定する要素はなさそうです。
実際、リサーチしてみれば、高いスコアを得ると思います。
このコンセプト理解が「納得的」と言えるかどうかは非常に疑わしいと考えられますし、過去、健康コンセプトで売れている酒は、養命酒と発泡酒のカロリーオフやプリン体オフのものくらいで、酒市場での主流にはなれません。
健康に良いというコンセプトは、カロリーやプリン体という健康に悪いものを除去したということで「納得t的」になったと考えて間違いなさそうですが、ここでいう納得的は論理的に問題ない説明をされたから納得するという納得とは違います。もっと、心理的な納得です。承認、共感、(愛)といってもいいかもしれません。
既存品の評価のリサーチの時は、供給側のコンセプトと消費者のベネフィットがズレていないかのチェックの問題になります。このズレがあることに気づかずにいると商品は売れなくなってしまいます。製造品質と知覚品質とが矛盾なく結びついて理解されたかどうかという風に言い換えることもできます。
2004,8