コラム

インサイトと「記号接地」

「記号接地」問題を最初に取り上げたのはハーナッドであるが、自分の頭の中では、サールが行った思考実験「中国語の部屋」問題とと勝手に混同されている。
中国語の部屋はチューリングテストの発展版みたいなもので、人工知能は意味を理解できない、つまり、強い人口知能は実現不可能(困難)でシンギュラリティは(簡単には)訪れないという理解である。
一方の記号接地問題では、人工知能はデータをたくさん(ビッグデータ)集めて「教師あり機械学習」の繰り返しで新たに提示された写真が「うさぎ」かどうかの判断は人間より早く正確に判定できるようになるが、現実のうさぎとの意味の連動は起こらない(起こせない)ということで、ここでも人工知能の限界を暗示して いると言うものである。(こういった事例にウサギ、リンゴ、シマウマが使われる理由はなにか?)

記号接地は、うさぎという言語記号が現実のウサギと結びつく(接地する)ことで、言語の意味が納得了解できる状態のことと考えている。
文字通り「腑に落ちる」「腹落ちした」などの表現にあるように体性感覚的連想である。
(但し、体性感覚は、この内臓感覚を普通は含めないらしい)
インサイトと記号接地を考えると、この「記号接地」の瞬間が「インサイト発見」なのではないか。
ぼんやりと考えていたコトバ(記号)が、データを読んでいた時、インタビュー調査の時、観察していた時に、ある意味(論理)と「接地」するのである。
自分ゴトとして体感的に意味や論理が明らかになる。

食品で「健康コンセプト」について考えているとき、FGIを観察していて「健康」というコトバが「前向き」と言う意味に「記号接地」した瞬間などである。
これこそがインサイト発見であろう。
インサイトが発見されれば、それまで考えていた健康の意味が自分ゴトとして豊かな論理を持って「わかる」はずである。
現在のところ、自分の思考はこの辺で止まっている。

 『言語と身体性』岩波
 『情報を生み出す触覚の知性』
 『触楽入門』

2016.4

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