コラム
メタファー法の発展
インタビュー調査は、ブランドの選択理由やイメージをバイアス無しで聞き出せるという特性があります。
バイアス無しとは「あらかじめ選択肢として用意された、理由やイメージ」ではなく、対象者の自然な表現が聞き出せることを意味します。
そこが定量調査にはないインタビュー調査の利点です。
ところがやってみると、なかなかうまくいきません。
ステレオタイプな表現が多く、インサイトまでたどりつきません。
例えばブランドの選択理由では
- いつも買っているから。ただ、なんとなく。目に付いたから。
- 安かったから。おいしいから、自分に合っているから。
などの回答がほとんどで、プロービングで突っ込んでもそれ以上の進展がない場合が多いのです。
ブランドイメージでも
- 高級感がある。品質がよさそう。
- 女性(男性)むけ。安心・信頼できそう。
などで、インサイトにたどり着けないままインタビューが終わる場合があります。
そこで、対象者にテーマそのものを語らせるのを一時、棚上げして自由に「物語」を語ってもらいます。
- ビジュアルの印象・イメージを自由に発展・発散してもらう。
- 自由に語った物語とテーマを結びつけてもらう。
という作業を経て、対象者自身も気づかなかった、分析者には思いもよらない「インサイト」を発見する。
というのがメタファー法です。
メタファー法では、固まっている対象者の評価・印象・イメージをもっと自由に発展・発散してもらいます。
そのきっかけに「脈絡のない写真」を使います。
脈絡のない写真とは、
- 誰が見てもわかりやすい写真(摩天楼の写真は「都会的、未来的」のメタファーになりやすい)
- 分析者があらかじめ「意味を付与したり」「解釈を与え」ない
写真です。
先入観感を与えず、持たず、対象者のメタファー表現を真摯に聞くのがメタファー法です。
*以下に2014年1月に実施した「シニア層にスマホを普及させるには」というテーマのメタファー法を示します。
そこで、メタファー法を使ってスマホ、ガラケーのインサイトを探ることにした。
<ガラケーとスマホをイメージする写真を選ばせ、それぞれでストーリーを作ってもらった>
*ある対象者の選んだ写真とそれにつけたストーリー(説明)
<最後にスマホ(上段)とガラケー(下段)とストーリーの関係づけをやってもらった>
それでも、新しさだけでなく日本の伝統やしきたりも大事にしてくれるだろう。
ガラケーは、慣れているし、のんびり、ゆっくりできる。使っていてあわてないし、安心できる。
でも、遠い先(雪を冠った山)だが、いつかは自分もスマホに挑戦したい。
<メタファー法から探り出したインサイト>
インタビューだけでは、「ガラケーは持ち歩ける電話」で自分のものとできている。
一方、スマホは「持ち歩けるパソコン」で、自分達には関係ないビジネスの人達向け。
インタビューはデッドロックに乗り上げたが、メタファー法によってインサイトが発見できた。
- スマホのインサイト = 家庭(主婦)にはなじまない持ち歩け
るコンピューター - ガラケーのインサイト = ゆとりのある日常生活
ここから、シニア層にスマホを普及させるには、高・新機能より、「親近感」を醸成する必要があろう。
との提案が導き出された。
*アウラセミナーでメタファー法を取り上げます。(2015年4月予定)
2015.3