コラム

メタファー(比喩)

ザルトマンがメタファー、メタファーと選挙カーのようにうるさい(これがメタファー=直喩)ので、メタファーについて考えてみました。
メタファーを最も単純に考えると文章表現上の単なるレトリックとなります。
ところが、認知科学と言語学の研究が進んで、レトリックを越えた思考の根本に関わっていることが明らかになってきました。
山梨さんの本に従ってみていきます。 まず、
「比喩(メタファー)は能動的な認識のプロセスであり、開かれた世界にむけての発見的な認知の手段 である。」(山梨正明「比喩と理解」認知科学選書1988)
と宣言されます。
比喩を言語表現を着飾るスタティックなものとの考えから、比喩は、ダイナミックな認知のプロセスそのものであり、あらゆる方向に向けた新しい発見が、比喩によってもたらされる。
ということになります。 さらに、
「比喩(メタファー)を通しての経験は、新しい認識と想像的な象徴の世界への入り口でもある。比喩に よって喚起された新しい経験は、不可解でとらえどころのない存在にたいし、具体的で納得のいく理解を与えてくれる。 また、このような認識のプロセスを介して日常の経験世界に具体的なイメージや斬新 な感覚を与え、慣れ親しんだ日常の世界にたいする新しい解釈を可能とする。」(同前掲書)
と比喩は日常生活(を意識する)そのものであり、個人と社会を含めた「創造(創作)」そのものである としています。
「いわゆる典型的な直喩や隠喩にかかわる現象だけでなく、換喩や提喩、慣用化された比喩、共感覚的な比喩、音声的な比喩、文字通りの意味の一部に組みこまれている凍結した比喩や死喩など」(前 掲書)も考察していくと比喩が知のメカニズムそのものであるとわかってきます。

さて、マーケティングインタビューの現場で比喩(メタファー)が使われることは極めて少ないようです。
それは、定性調査とはいえ、調査である以上、「事実」に基づくべきであり、そこには過剰な修飾と みられるメタファー(比喩)はいらないし、積極的に排除すべきだとの態度があるようです。
インタビューのレトリックとして「○○に例えたら?」と質問したり、コラージュを作らせたりすることがありますが、分析視点に基づいたメタファーの使用にまでは行っていないようです。

ここで、我々のマーケティングインタビューを

  1. 目的は、「消費者が市場やブランドをどのように認知しているか」を明らかにすることであり、
  2. それを「消費者の市場認識のプロセスにそって理解しよう」とする方法論で成立している。

と考えると、我々は、あるブランド、市場に関する消費者の比喩(メタファー)の現状と進化?(深化?) 過程を明らかにすればよいということになります。
どのブランドを買ったか、また買いたいかという事実に関する発言を集めても新しい発見はないということです。
では、どうしたらよいか、アプローチの方法は次回から考えることにします。

2005,9

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