コラム

メタファーによる分析

メタファーという表現は、誤解しやすいので日本語の「比喩」に統一します。
比喩には以下の4つのタイプがあります。(山梨正明「比喩と理解」認知科学選書1988)

直喩(smaile) 「君の瞳は宝石のようだ」(LIKE、SIMILAR TO)
隠喩(metaphor) 「君の瞳は宝石だ」
換喩(metomymy) 「鍋を食う」「黒帯=有段者」  それと関係したもので表現
提喩(synecdoche) 「青い目」→外人。「花」→サクラ  換喩のうち、部分と全体。

それと、いまでは比喩らしさを失ってコトバそのものになった

死喩(dead metaphor)  「机の足」

があります。

厳密には分けられませんが、直喩、隠喩は「みたてる」ことであり、換喩、提喩は「言葉のあや」であるといえそうです。
上記の例でいうと、直喩、隠喩では、相手(人間)の瞳の様子を宝石に「見立てて」、自分の相手に対する認識だけでなく、感情まで表現しようとしています。
ダイナミックで個性的な表現(比喩)ができるのが直喩、隠喩です。
「君の瞳は宝石だ」というメタファーに対して「君の瞳は100万ボルト」というメタファーは、より新しくよりダイナミックでより個性的といえます。
それに対して換喩、提喩は、その言語世界で認められるだけの時間の経過が必要になります。
それだけスタティックであるといえます。
また、業界用語的比喩(金星=美人=相撲の世界)も換喩、提喩の場合が多くなります。

マーケティングインタビューでメタファーを使う場面を考えます。
ザルトマンは深層心理の解明に有効と言っていますが、そこまで大げさに考えなくても、通常のインタビューにも使えます。
通常は、

  1. 見立てられるものが、インタビューのテーマで、
  2. みたてるものを用意して、
  3. 見立ての内容や理由を語ってもらう。

というプロセスをとります。
例えば、

  1. 自社ブランドのイメージを把握したい。というテーマなら
  2. 対象者にそれを「よく表現しているもの」の写真を用意してもらい。
  3. その写真がどのように当該ブランドを表現しているかを語ってもらう。

ということです。

レクサスのブランドイメージがテーマだったとして、
対象者にレクサスブランドのイメージにピッタリの写真を持参してもらいます。
その時、レクサスの店舗写真やクルマそのものの写真は避けてもらう必要があります。
それ以外は何でもいいのですが、枚数は3~4枚に限定してもらいます。
持参した写真をもとにレクサスのイメージを語ってもらうのですが、その時、対象者がストーリーとして語れない場合があります。(語れないことの方が多い)
その時は、モデレーターがストーリーを作ってみせて、対象者の感覚、イメージとの一致、違いをインタビューしていくという方法をとります。
モデレーターには、ビジュアルからコトバによるストーリーを作るという能力が要求されます。

この方法は、イメージが分散しすぎる危険があるので、対象者数を多く調査する必要があります。
そこで、あらかじめ写真を用意しておいて、その中から選んでもらってストーリーを作るという方法もあります。

こういったインタビューの積み重ねで、「先進的」「高級」「おしゃれ」などの一般的なイメージ項目(定量調査項目)の中味(意味、認識)の深さがわかります。
また、そのブランド固有の新しいイメージ項目の発見も可能になります。
さらに競合ブランドとの比較、ベンチマークでの実施などを行えばイメージの変遷とその要因をもつかむことが可能になります。

2005,10

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