コラム

ニューロマーケティング

「日経サイエンス」がニューロマーケティングを特集しています。
最近の脳科学研究はめざましい進展をみせていますが、「マーケティング」に適応させるほどにはニューロサイエンスが進んでいるとは思えません。
脳科学は生物学、医学の専門領域ですが、コンピューターの発展による「計算機学」の発想の影響を受けたことで、大きく発展したと考えられます。
脳科学は、宗教や哲学の関心事であった「心身問題」を科学の問題とできる手がかりを与えてくれました。 簡単に言うと、心を「計算機理論」で分析しようとする試みです。
(心を計算機理論で解明しようとするのは、脳科学より心理学で顕著ですが)
この心の計算機理論の中心が「ニューロン発火」です。
ニューロンは脳神経細胞のことで、ニューロンの先端にある(正確な言い方ではありませんが)
シナプスの間を神経伝達物質が流れることで情報をやりとりしています。
このようにシナプス間で神経伝達物質が移動したことをシナプス発火といいます。(これも厳密ではありませんが)
このニューロン発火こそが、感覚、質感、クオリア、意識、言語、心が生まれる基礎だと考えます。
このあたりが、あらゆる計算を電流のオン・オフの2進法で成立させるコンピューターと似ています。
ニューロンは、集団で発火したり、連続して発火したり、同期して発火したりしますが、発火する脳の部分が特定の感覚、感情、意識と特異的に結びついているという発見がありました。
そして、fMRIと呼ばれる、脳の活動部位を特定できる装置の開発によって、恐怖を感じるとき、喜びを感じるときに活発にシナプス発火する部位を特定できるようになったのです。

ここで気の早いマーケターが、fMRIをリサーチに活用しました。 日経サイエンスの別冊に載って いた例は、コークとペプシの味覚評価で、コークが好き(ロイヤリティ?)という集団にコークと明示してコークを試飲させると、非明示の時とニューロン発火する部位が違っていたというものです。
「だから、どうした。」ということですが、認知的不協和とか、AIDMA理論とか記述的であった、心理学やマーケティング理論が、論理的(数学的)に書きられられる可能性が出てきたと主張しています。
対象者全員に、fMRIに入ってもらって新製品のコンセプトチェックのインタビューを行えば、ほんとうに「受容したか」、つまり、発売されたら買うかということが、今より正確にわかるかも知れません。
ただし、fMRIは、1台1億円近くするし、装置も1人が寝て入るようにできている大きなものです。
脳科学の成果は別の方法でマーケティングやりサーチに役立ちそうですが、ニューロマーケティングといわれるには、まだまだ時間がかかりそうです。

2006,10

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