コラム

選択盲

脳の認知能力のいい加減さを表す現象として「変化盲」があるそうです。
図書館やホテルのフロントで、記入している間に受付係が男性から女性に、肥満体から痩せ型に入れ替わっても8、9割の人が気づかないそうです。
さらに「好みの女性はどちらですか」と二枚の写真を見せられ、手品的に選んだ写真と反対のものを渡されてもほとんどの人が気づかず、渡された写真について「笑顔がすてき」とか理由を述べるそうです。
(選んだ写真は笑っていない!)これは「選択盲」と名づけられたそうです。

ここで神学論争です。
われわれリサーチャーの分析の根底がゆるがされてます。
デザイン案2案の中から一方を選んだ人にその理由をインタビューすることが正しいのか。
対象者はウソを言っているわけでは決してない、脳が気づかないのだからどうしようもありません。
そうなれば、認知的不協和もなく、目の前の写真のよいところを選んだときの理由として平然と(ウソを)語るわけです。
プロスペクト理論、フレーミング効果、アンカリングなど認知バイアスを考えてリサーチしなくてはいけないと考え始めたこのごろ、それ以前に脳の認識機能にこんないい加減さがあっては打つ手なしです。
いったい何を頼りに調査すればよいのでしょう。

2009,6

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