コラム
「シニア市場」の定義
「シニア市場」のマーケティングに関して前回は、
・シニア市場が注目されてきた背景
・シニア市場の消費者特性 の2点を概観しました。
今回は、この「シニア市場」の定義を、登場の仕方・ネーミング、および「団塊」概念との関係から見ていきます。
日経産業消費研究所のHPに1993年からの研究報告書のタイトル一覧があります。
これをみると、シニア市場の登場の仕方、ネーミングの変遷がわかります。
なお、タイトルだけで内容は吟味していませんので、以下のコメントは私個人の意見で、日経産業消費研究所の見解ではありません。
1993年以降のタイトルのうち、消費市場のセグメントや消費者特性の変化をテーマとしているタイトルを列挙してみます。(HPには1993年以前のものは載っていません。)
1993年 | ||
「コンシャス消費の時代 バブル崩壊後の消費動向」 | 7月 | |
「既婚男性の意識と消費動向」 | 12月 | |
1994年 | ||
「シルバーの生活と意識」 | 8月 | |
「女子高生の消費行動を探る」 | 9月 | |
1995年 | ||
「無党派消費者の実態と買い物行動」 | 10月 | |
「価格破壊と消費者 価格感と買い物行動調査」 | 11月 | |
1996年 | ||
「ネチズンの意識と行動」 | 3月 | |
「25歳の生活と消費行動」 | 7月 | |
「プレシルバー(50代男性)の生活と意識」 | 10月 | |
1997年 | ||
「セルフナビ消費者 新しい消費者の意識と行動」 | 4月 | |
「プロシューマーの時代」 | 7月 | |
1998年 | ||
「ブランチ族」の消費行動 40・50代女性の生活実態」 | 3月 | |
「平成キッズ ピカチュウ世代の意識と行動」 | 7月 | |
1999年 | ||
「21世紀初頭の消費リーダー 20歳前後、30歳代の生活意識」 | 3月 | |
「団塊男性の定年・消費」 | 7月 | |
2000年 | ||
「ニューフィフティーズ市場を拓く」 | 3月 | |
2001年 | ||
「携帯電話ユーザーの意識と行動」 | 11月 | |
2002年 | ||
「モバイラーの実像2002」 | 6月 | |
「団塊ジュニアの消費と行動意識」 | 11月 | |
2003年 | ||
「団塊世代の消費意識と行動」 | 10月 |
以上は恣意的選んだもので、この他にも定期的に「若者調査」や「OLの調査」などの研究報告があります。
シニア市場らしきものは、1994年に「シルバー」というくくりで登場しています。
同時に「女子高生」もテーマとしてとりあげられているのが何か時代を感じさせます。
96年には、「プレシルバー(=シニアのこと?)」で50歳代を研究し、その妻たちを「ブランチ族」というくくりにしています。
99年には団塊の男性にフォーカスしています。
この年、団塊世代の年齢は49~52歳で、全体が50歳代になりつつあります。
2000年には「ニューフィフティ」という聞き慣れないコトバが登場し、2002年に団塊の子供達(団塊ジュニア)を見て、今年、2003年に団塊世代を正面から取り上げたタイトルになっています。
このように、シニア市場は10年以上前から、注目されていますが、市場という割には範囲がはっきりしません。
年齢区分で、何となく50歳以上65歳くらいまでかなという程度です。それ以上はシルバー市場となるのでしょうか?
そこで、最新版「団塊世代の消費意識と行動」2003を取り寄せてみました。
調査の対象(母集団)で市場のくくりをみると、
・団塊世代を1947年~1949年生まれとはっきり定義し、対照グループとして、
・1937年~1939年生まれをシニアとして設定していました。
調査時点の年齢では、団塊=53~56歳、シニア=63~66歳となります。
報告書のサブタイトルがー巨大マーケットの将来像ーとなっていることからわかるように、日経さんとしてはこの4年間の出生コーホートそのものをひとつの市場と定義しているようです。
シニアは対照グループとして設定しただけで、市場とは定義しておりませんし、シニアは単なる加齢集団でコーホートではありません。(女子高生市場と同様、市場構成員は毎年入れ替わる)
以上のように、コーホートとしての団塊世代が、日本の少子高齢化という市場全体の傾向を象徴しているとの認識があるようです。(人口動態的傾向)
・ いつの時代も変わらない加齢による消費意識・行動の変化(加齢効果)と
・ 市場経済の高度化が進んだことによる消費意識・行動の変化(時代効果)が
・ 団塊というコーホートに象徴的に出現しているだろう(コーホート効果?)
という仮説です。
もうひとつ、
・ただ単に、人口構成比が大きくなるという、数の変化が質の変化を生むという仮説も成り立ちます。
どちらにしろ、団塊世代というコーホートが新市場を生むインパクトになるとの仮説です。
これでは、団塊の「世代論」の繰り返しになってしまいますし、「シニア市場」の定義にはあまり役立ちません。
そこで、前回もふれましたが、我々はこの市場を次のように定義しています。
「末子が大学(高校)卒業後~孫の誕生」まで。
年齢では50歳(47、48歳から)~65歳まで」と考えています。
この前後の時期、「子育て、壮年期」と「老年期」との比較対照で「シニア期(市場)」を分析する必要があります。
次回は、このセグメントの特徴について、数多くのグループインタビューから得られた知見に基づいて詳しくふれます。
2003,10