コラム
シニアはやっぱり「老人」です ―シニアの消費行動の特徴―
われわれは、シニア市場を50歳から65歳と定義しました。
末子が高校生(子供が家庭的・精神的に自立する)以上で孫の誕生の可能性がでてくる(本人が主体ではないものの、新たな家族形成意欲が生まれる)までのライフステージとなります。
前々回で、シニアの特性として以下の5つをあげました。
これは、年間300グループ程度実施しているグループインタビューでお会いしている消費者の方々を観察することからわかった特性です。
- 圧倒的に女性が元気(アクティブ)です。
- 個別化が極端に進行します。
- 夫婦、地域など身近なところに関心が集中します。
- 新しいことへの関心度、許容度は少なくなります。
- 生物学的年齢と自己イメージ年齢の差が大きくなります。
今回は、消費行動にフォーカスして、シニアの特性をそれよりも若い世代との比較で考えてみます。
新製品のコンセプトチェックのグループインタビューを想定します。 コンセプトチェックのグループインタビューは、既存市場の認知マップを確認して、新ブランドのコンセプトを評価してもらうというステップを踏むのが一般的です。
まず、既存ブランドの認知やイメージ、選択ブランドを聞く場面でのシニアの特徴は、
- 認知ブランド数が少ないが、助成されるといくつでも出てくる。
- 各ブランドのイメージの差異認識が弱い。
イメージの構成要素が古い(昔のCMはよく憶えている)
イメージの混同が多い(トップブランドに集約されるイメージ) - 選択ブランドの選択理由がはっきりしない。
習慣的にブランド選択している - 選択理由がはっきりしないのにブランドへの固着が強い
- 新ブランドへのトライ意欲が低い。
ブランド意識よりもジャンル意識が強い。
新ブランドのコンセプトチェックの場面では 、
- コンセプトの理解が遅い。(反応が鈍い)
- 一般的な理解をしたがる。(自分がどう思うかという反応ではなく、一般的にどうか)
- コンセプトの理解・解釈がヒネくれている、素直ではない。
- メーカーの意図(作成者の気持ち)を読みたがる。(特に男性)
- 革新的なコンセプトはとりあえず拒絶する。(既存ブランド、ジャンルへのこだわり) などの特性があります。
また、最初の自己紹介では、
- 自己紹介が長い。テーマに関係ない自己紹介が始まる。
などの特徴があります。
これらをまとめると
- シニアはブランド意識が弱く、ジャンル意識が強い。
- シニアの消費行動はパターン化が強く、習慣的である。
- シニアの情報感度は衰えないが、情報の受信パターン(感受性)が固定化する。
- 長い社会生活・家庭生活からの知恵は豊富だが、それがパターン化につながる。
という特性が浮かび上がります。
詳しく分析していませんが、10年前のシニアと現在のシニアとでこの傾向に大きな差はないと考えられます。
インターネットを使いこなし、携帯メールの絵文字が使えるシニアがいくら増えても、消費者として「老化」が進行していることに過去も現在も変わりはありません。
人口構成比、消費支出構成比ともに大きな市場になってきているので注目されていますが、マーケティング的には扱いづらい「老人」セグメントであること忘れないようにしたいと思います。
2004,1