コラム

ソーシャルメディアとリサーチ

インターネット関連からは新しいコトバや表現が次々と生まれては消えていく。
あれほど騒がれた「Web2.0」も最近はトンと聞かない。
ソーシャルメディアというコトバも似たようなもので定義が定まらないうちに消えてしまう運命なのかもしれない。
別に揶揄しているわけではなく、新語が次々に生まれる市場はそれだけ活性化している証拠であり、何10年間にわたって同じ言語で仕事が進むリサーチ業界からみれば、うらやましい限りである。
ソーシャルメディアだが、ここでは単純にブログ、SNS、Twitter、(2chの板も)としておこう。
このメディアの特徴も「Web上を流れる消費者(ユーザー)の自発的な意見、発言」とする。
ここ1年くらいはTwitterが隆盛で有名人、無名人のだれかれが毎日、「憑かれた」ようにつぶやいている。
めざといことでは定評のマーケターたちは「使える」前提でいろいろ仕掛けているらしい。

ところが、ここでも常にマーケターの隣にいるはずのリサーチャーの動きが鈍い。
時の流行(はやりモノ)に付和雷同しない冷静さがリサーチャーの身上と考えればよいのだろう。
確かに「1時間に100ミリの雨量に近いような集中豪雨」的情報のカタマリがあちこちで不規則に発生しているような状況はリサーチには向かない。
すぐに平準化とか代表性を考えてしまうクセが染みついているリサーチャーはおぼれて目を回すのが関の山といったところだろう。
ならば、啓して遠ざけていれば集中豪雨は去り、昔のような平和な天気が戻ってくるかというと、これが心もとない。

そこでソーシャルメディアとリサーチを考えてみる。
まず、従来のリサーチの発想で見ると、「ただ、FREE」のデータが山のように蓄積されるという事態にどう対処するか。
方法は2つで、

①ただ(無料)なんだから、みんなブチ込んで分析してしまえ
②何らかの基準でデータをスクリーニング(サンプリング)してから分析しよう

ではないか。 ①なら、収集できるものは全て集めて「マイニング」の方法論を使う。
それを毎日やれば、思わぬトレンドがつかめるかもしれない。
さらに週単位、月単位、年単位のパネルデータとして扱ってもおもしろいかも知れない。
費用は、自分の人件費とコンピューターパワー費だけであるが、「売れる」データになる保障はない
②の方法は漠然としたものでもいいので「仮説」が必要だろう。
設計は従来どおり行い、データ収集の部分だけ無料の山から無料でもらう感じかな。

従来のリサーチの枠にとらわれずに考えるとソーシャルメディアの双方向性、ネットワーク性が生きてくる気がする。
マーケティングリサーチ綱領などドブに捨てて新しく「マーケティング」と「リサーチ」の組み換えができないものだろうか。
まだ、何もわかっていないが。

2010,8

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