アウラの商品群
ラダリング法
ラダリングとレパートリーグリッド
インタビュー調査の方法論で確立されたものは少ない。
その中のひとつに「レパートリーグリッド&ラダリング」があります。
いくつかの実践に基づいてアウラなりに整理してみたいと思います。
まず、レパートリーグリッドの考え方の背景です。
レパートリーグリッドとは心理面接、カウンセリングでの方法論の応用です。
クライアント(患者)の精神疾患の原因のひとつとして幼少期の人間関係に問題があり、それを自覚していない(抑圧している)患者に自覚させるのが治療の第1歩だそうです。
幼少期ですから、親子関係の結び方に問題がある訳ですが、いきなり患者に母親・父親との関係を語らせようとしても多くの困難があることは簡単に想像できます。
そこで、自分との関係ではなく
母親と他の兄弟姉妹の関係
母親と父親の関係、父親と他の親戚との関係認識などを語らせる
ことで自分と母親(父親)との関係を認識させようとする方法です。
これをマーケティングリサーチ、インタビュー調査の現場にあてはめるとインタビューの現場で、対象者(消費者)に「何故、このブランドが好きなんですか。自由に話して下さい。」と聞いてもはかばかしい答えは返ってこないのが普通です。
そこで、「AブランドとBブランドとを比べてどこが違うのですか」と聞いていきます。
このように「一対比較」の繰り返しを行わせることで、
- 対象者が語りやすくなる。
- モナディックでは気づかなかった認知に気づく。
- 自分の「主観」を客観的に語れるようになる。
などの利点が生まれわけです。
こうして、全体(ブランド間の関係や「好き」の構造)をどう把握しているか(認知構造)が明らかになります。
ただ、この方法にも欠点があります。
それは、
- ワンオンワンのインタビューが基本であるので時間と費用がかかる。
- 商品が多いと組み合わせが多すぎて対象者の負担が大きくなる。
- まとめ方(分析)が統一できない。などの実施上の欠点です。 これらの欠点をカバーする方法として、
- 集団(グループ)を個人と考えて、グループインタビューに適用する。
- 「好きな順」などで順位付けを行ってから1位と2位の比較をさせるなどの工夫をする。
- ラダリングの考え方で統一する。
ここでラダリングの登場です。
これは認識論の枠組みのひとつです。
商品の認知・評価を具体的部分からそれが引き起こす感情や気分、さらにもっと上位概念の表現まで「はしご=ラダー状」に概念図を作る方法です。
ある商品特性(スペック)がどんな結果(ベネフィット)をもたらしどのような価値をもたらすかということになります。
インタビューの現場では
- 上位概念、下位概念を誘導質問なしで気づかせ、発話させる。
- 発話されたことがどの段階のものか確認する。 などの点に留意する必要があります。
分析(ラダー作り)では、
- 無闇にラダーを増やさない。(人間全体を捉えようとしたマズローでさえ5段階です。)
- 同じラダーに同じ概念レベルが来るように注意する。
- 基本的に→はクロスさせない。(下位概念から上位概念への→は1本が基本)
などに注意が必要です。
レパートリーグリッドとラダリングはセットで使う必要は必ずしもありません。
通常のインタビューの現場でも
- 対象者は具体的なものの「比較」の方が発話しやすい
- 上位概念、下位概念で言い換えさせるプロービング
などの工夫として役に立ちます。
レパートリーグリッド&ラダリングの限界としては
- ツリー状の認識を前提にしていることの限界。(人間の認知は線型とは限らない)
- 商品ジャンルには有効だが、ブランド別にまでは適応しづらい。
の2つが大きなポイントです。
現実的には、
- 多くのスペックから構成されている商品向け。(車はいいが、飲食品には不向き)
ということで、「コンジョイント分析」と似たところがあります。